従来の「教育→仕事→引退」の人生を、ライフシフトでは「3ステージ」と表現しています。
しかし、社会の変化が激しくなるにつれて、ひとつの安定したライフスタイルを数十年つづけることは難しくなっていきます。
そこでライフシフトでは、個人がそれぞれのタイミングでライフステージを切り替えていく「マルチステージ」が提唱されています。
マルチステージとは、単に人生のステージの数が増えるというだけではありません。
教育、仕事、引退に加えて、起業、副業、学び直し、フリー、ボランティアなど、さまざまなステージを個人が選んでつなぎ合わせるということです。
そのため年齢とステージが紐つかなくなり、「20歳だからそろそろ会社員だね」や「40歳だから家族を養っているんだね」というこれまでの固定観念が薄くなるでしょう。
3ステージで生きぬくつもりでいた40代・50代以上の世代にとって、マルチステージの世界観はイメージが湧きづらいかもしれません。
しかし、実は今の10代・20代・30代はマルチステージの人生を無意識に理解しており、学生の頃から「自分はきっと多くの変化を経験することになるだろう」と感じている人が多いそうです。
その証拠に、先日は「新卒の50%が今の会社を10年以内にやめるつもりでいる」というニュースが流れていたほどです。
企業の採用担当者は、非常に困ることになるでしょう。
今まさに、一斉行進だった3ステージの時代が、マルチステージの時代へと移行する境目にあるのです。
そしてライフシフトでは、◆有形資産と無形資産のバランスをとるたの新しいステージが提唱されています。
それが、
の3つです。
●エクスプローラー(探検者)
エクスプローラーは、身軽に世界を歩き回り新しい発見や未知の価値観に触れることによって、人生の幅を広げます。
3ステージの中でも、大学在学中やその前後に海外経験をする方はいましたが、多くの場合それは就職や復学までの1年間など限られた時間で行われていました。ライフシフトにおけるエクスプローラーのステージは、そういった活動をより長い単位の期間で行う人々です。
うまれ故郷とまったく違う環境に触れ、その文化に入り込んで体験することで、人生の幅は大きく広がることでしょう。また、自国では決してありえなかったような人的ネットワークが築かれることも期待できます。
20~30歳の若者が行うように思われがちですが、40代半ばや70~80歳など人生の転機になりやすい時期にも、蓄えたお金をもとにエクスプローラーを行うことで、自分自身と深く向き合いより自分らしい人生へと軌道修正できることでしょう。
●インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)
インディペンデント・プロデューサーは、従来のキャリアの道筋からはずれて自分のビジネスを始めた人たちです。今までの起業家・自営業者とまったく異なるタイプの起業家になったり、企業と新しいタイプのパートナーシップを結んで経済活動に携わります。
ひとことで “起業家” といっても、金銭的な成功を目指すための起業家ではなく、実験・挑戦・失敗・試行錯誤などの経験によって無形資産を培うことを目的としている人々です。まさに「やってみなければわからない」を体現しているステージといえるでしょう。
このステージでは「安心して失敗できる」というのが大きなメリットになります。背負っているものが少ないため、失敗によるダメージが少なくて済み、実践を通じて多くを学ぶことができます(たとえば、ビジネスを成功させるための資金繰りやキャッシュフローの管理、対人コミュニケーションスキル、人脈作りなど)。
インディペンデント・プロデューサーを経験した人々は、その現場経験によって得たスキル・実績・ブランドによって、社会的に重宝される人材となることでしょう。
●ポートフォリオ・ワーカー(複業)
ポートフォリオとは、投資などにおける資産の構成割合のことを指しますが、ここではひとつの仕事に専念するのではなくさまざまな活動のバランスを取りながら生きるステージです。収入のための仕事はもちろん、経験を積むための副業や、親戚のビジネスに協力したり、地域コミュニティやボランティアに携わるなど、その要素はさまざまです。
動機もさまざまで、自分の価値観に従って、さらなる金銭的資産の構築、新しい可能性の模索、活力や刺激を得る、新しい知識の学習、社会貢献などを組み合わせることができます。
しかしながら、毛色の違うさまざまな環境にその都度スイッチを入れ替えなければならないため、長らくひとつのキャリアに集中してきた人にとっては目まぐるしく感じるかもしれません(だからこそ刺激的だともいえます)。
先のエクスプローラーやインディペンデント・プロデューサーと同じく、年齢によって限定されるものではありませんが、その性質上、すでにある程度の経済的土台を築けている人がこのステージを選びやすいとされています。
ここに挙げたのは、あくまでもライフシフトで書かれている表現です。
マルチステージの人生戦略が広まるにつれて、名前をつけることもできないほど多様なステージが出てくることと思います。
ポイントは、多種多様な人とかかわりをもち、人の人生経験から得た学びや気づきを活用して、自分らしい人生戦略を組み立てていくことが大切になります。
→6.3ステージからマルチステージへ